2010年5月13日木曜日

人間山脈と呼ばれた男


三寒四温ってもう言い飽きた、早く初夏の一句をひねらせてよ、
むずむず、むずむず。

えぇい、ままよ、 
夕暮れが夜に押し出された今こそ、
我が藤本家の兄について臆面もなく書かせていただきましょう。



兄の名は和将、親父が和茂でご存じわたくしは和剛ですので、
藤本家の男衆には総じて「和」がついていることになります。
えぇ、お察しの通り親父の婿養子の意地ですとも。

さておき、兄とわたくしは「へたれ」「ふてぶてしい」の
共通項のほかは、毛質から性質のひとつまで、
同じ股から生まれてきたとは思えぬほど違うのです。

体型はそうですね、野茂英雄です。
小学校6年生で170センチあり、
ジャイアニズムを生来満身に体得しており、
聖天坂の駄菓子屋では帝王と呼ばれ、
禁断のカードダス二枚出しほか荒事に長けた男でありました。
えぇ、お察しの通り、ニックネームは「アンドレ」ですとも。

同志社香里に進んだ彼は、即ラグビー部にスカウトされ、
FW一列目に抜擢、グラウンドにはおりませんでしたが、
花園ベスト8まで進んだのであります。


そういう兄を持った弟の針の筵にあなたも座ってみませんか?

幼稚園時代より、夜闇の庭で上手投げの稽古、
中学高校では柔道で黒帯を取りプロテイン人生、
わたくしがひとえにバスケやサッカーに脇目もふらず
格闘技を修めてきたのも、この兄がいたからなのです。

まだ続く人生の試合経過は、見事に百戦全敗であって、
ZOIDのアイアンコングを背中に投げつけられてできた裂傷、
飛んできた加湿器を受け止めできた手の創傷、
顔面ハイキックで歪んだこの鼻ひとつひとつが、
その記憶を生々しくとどめているのです。



でもただの粗暴な男ではないのが兄の魅力でもあります。
幼き頃よりあらゆる博打に通暁してきただけでなく、
大学に入ればファイナンシャルプランナーの資格を取り、
株や保険といったものに無類の強さを発揮、
競馬の一口馬主では重賞を勝つ馬を続出せしめ、
なぜか射撃部に入って「京都アマ一位」といった
賞状を持ち帰るようになり、
昨年は趣味の釣りで真鯛を100匹釣り上げるといった
わたくしが一切の適正を見いだせないものを得意満面でこなし、
月に20杯食べるともらえる「天下一品」Tシャツを着て
のしのしと半ケツで家を練り歩く姿は、
まったくこの世の奇貨、としか思えないのであります。


万事C調の「大艦巨砲主義」とでもいうべきわたくしに対して、
緻密にして時に非情、非情ゆえに頼れる現実主義者の兄とは、
最近でこそ酒杯片手に腹を割れるようになったのですが、
その兄に、186センチ100キロの兄に、
なんとまぁ、「けっこん」のけの字が見えてきたのであります。


こうなればもういてもたってもブルドッグなのが、
わたくしと同じく万事C調の母親。

夜な夜な帰宅して聞かされるのは兄や相手の話ばかり、
着物の準備やら友達誰呼ぶねんやら、
まだ決まってもいないのにまるで自分がするかの有様。


そりゃわたくしの部屋も雨漏りしてるとはいえ、
「もう家建て替えるしな」と建築家と相談を始める始末。



えぇ、お察しの通り、オトコ和剛30歳、
住むところがなくなりそうです…。




腹違いの愉快な兄たち Photo by 三男
腹違いの愉快な兄たち Photo by 次男
素晴らしき哉、BROTHERHOOD!

2010年1月4日月曜日

頌春はしょうしゅんと読みます。

 Illastrated by Saito “riehey” Rie