2013年10月22日火曜日

ふじもせんとくんの休暇/第八回 さよなら、ふじもせんとくん。





「夜がまた来る」





 大陸に抜けるかと思いきや、きっちりシュート回転して本州にホームラン。
 

 当たり年っぷりったらバレンティン状態の台風27号、28号が、何やら“藤原効果”なる現象でもって日本に襲いかかる寸前。うーん怖すぎる。

 わたくしといえば、公私ともにそれこそ嵐の前の静けさというところですが、フランスブログも帰国三ヶ月でようやく、こうして、完結の佳き日を迎えようとしています。


 ポン・ヌフの恋人は船でセーヌに消えていった。失意のふじもせんとくんが、さぁ日本に帰ってきます。



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9日目

「どれ使ったかわからんくなって」

「ギャラリーラファイエット吹き抜けすぎ!」

「毎朝食い過ぎて快便の極み」



 失意のまま迎えた翌朝、気を取り直して頭にコームを当てたふじもせんとくん、終日パリでフリーの最終日は、ラリーレースで言うコ・ドライバーに徹しました。


 方向音痴な同行者のトランスポーテーションを一手に引き受け、10枚綴りの地下鉄切符をまとめ買い、路線図と地図を見比べつつ巧みに番線の乗り換えをキメていきます。

 大阪よりは難しく、東京よりは容易いパリの地下鉄は、乱暴すぎる運転や扉の開く勢い、ハンカチなくしてはこらえきれない車内に充満する腋臭に耐えられるなら、いや、腋臭にさえ(ココマデ傍点)耐えられるなら! なんてことはない。

 ヨーロッパ最大級のデパート・ギャラリーラファイエットをまずはうろちょろ、蚤の市で有名なクリニャンクールまで足を伸ばします。かわいい駅名に比してゲットー・ボーイズの露天が連なるなかなかのワイルドサイドでしたが、マーケットの中にキレッキレの店も数軒発見。


「あっコレめっちゃカッコええやん⋯ゲッ」
「この小さい雑貨なら⋯アーッ!」


ふじもせんとくんが気に入って手に取ったものが、カール・ラガーフェルドの自筆クロマキーだったりするわけで、メイクマネーして再訪することを誓いました。


「クリニャンクールののみの市。
クリニャンクールって何回も言いたいよね」


「一番イケてたのはココでした」

「マレのギャラリーにもジャポネスクの風」

「コレット。そらココいかなモグリですわ」



 シャンゼリゼやオペラ座へ行くまでもなく、最近盛り上がってるマレ地区で買い物は完了。
 いい匂いのするゲイタウンをひらひら舞いつ踊りつレクレルールで冷たい視線、両手に荷物をしっかり増やしてはメルシーでメルシーと言い、歩き疲れてもつれた足で入ったコレットでは、あまりのファッショナブルさにトランス状態に。
 
 最終日なのに何をとち狂ったのか。最後の晩餐は、サン・タン通りでラーメン餃子セットだったのでした。




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 この最終話が過去形なのも昨年と同様、眠りの機内でひとり書き続けているからです。

 パリは、昨年のイタリアとは違い、完璧な観光地であるとともに、ニューヨーク的な消費のサイクルもきっちりとある最先端の街でもありました。
 それは古来より、未来のパリの姿を想像したグラウンドデザインがきっちり成されてきた土壌の強さゆえと感じます。水都であることも含めて大阪が模範にできる部分は多いはずですが、経済合理主義のもと100年後の大阪の未来を語る人はほとんどいません。


 北欧をまわりシベリアを通る関空行き、高緯度の夜はあまりにも短くて。寝息の中でひとりサンセットとサンライズのスペクタクルを堪能しています。

 エールフランスの充実した音楽プレイヤーからはデビッド・ボウイの「The Next Day」。ひたすら続く森に乱暴な絵を描く万里の河、蒼と橙の境目にひとつのぞく岩山。海、雲、山、河、太陽、ボウイが「Where Are We Now」を最高の声で歌っています。
 


 高知・鹿児島特集の班長を終えて飛び出した日本、昨年と同じく訪れた海外で、しぼり切った雑巾に水を吸わせるように、未知を五感で味わい、空いた時間はひたすら本を読み(実に4冊読みました)、こうしてPCに向かい、大好きな文章に耽溺できる僥倖がありましょうか。

 ふじもせんとくんが少しだけ開けた窓から射し込む光に、横の新婚が寝ぼけながら怒っています。離陸時から支給毛布にくるまり、アイマスクに口マスク、首クッションで寝ていた彼は、来年にはその一度きりだろうハネムーンの行程のなにも覚えていないのでしょう。

 立てた中指で窓を閉めたら、もう日本海はすぐ、そこ。



「激動の一年が、やってくる」



 そう力強く頷いたおフランス帰りのふじもせんとくん、イヤミ氏よろしく半分脱げた靴下を、膝下いっぱいまで引き絞るのでした。

(ふじもせんとくんの休暇 おわり)



「さよなら、ふじもせんとくん」


all Text&Photo by K.Fujimoto




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