2013年9月1日日曜日

ふじもせんとくんの休暇/第四回 ホーリー&ブライト。


 


「雨の叢雲」



 校了のせい、というのは真っ赤なウソで、10月売りファッション特集の仕込みと連日の酒宴で体調がすっかりイカレちまいまして。

 いつしか聞こえくる9月の声。

 いえ、本当のことを言えば公私ともに“できごと”が多すぎてまったく手がつけられない状態でした。そのあたりはまた追って。

 4日目はパリを離れ、モン・サン・ミッシェルへのアプローチに続くシャルトル大聖堂へ。今回も移動、移動で小品ですがどうぞ!



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4日目

「尖塔のデザインが左右違うの。どっちが好き?」



 今の海外旅行といえば、友人同士でパワースポットを訪ねる、隣国へ美食を楽しみに。
ハネムーンや定年後の楽しみの他、仕立てられた観光地と宿、レストランを巡り続けるツアー旅行の時代ではない、そう思います。特にふじもせんとくんのような壮年男子のベタ観光というのは、かなり珍しいケースなのではないでしょうか。

 「開いてきた自分の感覚にひっくり返るならこの年なのにね!」

 33のゾロ目を迎え、モラトリアム期間がほとんど残り少ない中、押し寄せる未知を、何ら後顧の憂いなく踏みしめられるのですから。




 後部座席にグラサン引っ掛け2席をエラそうに占めたふじもせんとくんを乗せてバスは西へ。

 街場から20分もすればたちまち田畑と牛馬の牧草地、知ってるヨーロッパの風景が広がります。石造りの平屋、その門番をするのは背の高いバラ。広がる地平線のかすむところに点在する緑の塊に、かつての森の姿を想像します。

 「どうしてこんなに寝られるんだろうね」

 朝食を終えてまた眠る前の同行者の頭に鼻くそをつけてやりたい気分。顔の黒い羊のやっぱり羊なあの声が、呆けたバスに浴びせかけられます。



 目的地は世界遺産・シャルトル大聖堂。

 5万人の町に不釣り合いな2本の尖塔を突き立てたそれには、氏子が寄進したやっぱり聖書の絵解きなステンドグラスが張り巡らされていました。 
 

「色とりどりより、モノトーンが最高で」


 おヒゲを付ければ酔拳に登場するジャッキーの宿敵・テッシンにも似たガイドのOさん、この旅はやりのしんねり系ヘアーのOさん、彼女によればマリア様の聖ヴェール実物があると言います。見た感想をせんとくんセッド

 「お、おう」


 …恐れながら申し上げます! 聖遺物に心底の感動を覚える日本人はいらっしゃいますか! 聖遺物に滂沱して手を合わせる日本人はいらっしゃいますか! レギンスはまだしもトレンカの魅力を誰か説明いただけますか! すし詰めの山手線の中で皆さんは何を考えておるのですか!!!


 足尾銅山鉱毒事件の田中正造ばりの大奏上につい取り乱しましたが、まったく西洋の旧いものは、キリスト教的マインドが骨肉となっていなければ、やはり本質の理解には時間がかかるようです。これはイタリアでお遍路をした昨年とまるで同じ感想です。


 「待てよ…あっ! これは…」


 自由行動になってから聖堂の中心に向かうと、そこにミステリーサークルにも似た直径10メートルほどの円形レリーフが床に彫られているのに気付きます。ジャスティスな何かを直感したふじもせんとくん、素足のすり足でその線上を進むひとびとの列に早速加わります。

 無心で迷路状のそれを歩くこと5分、九十九折を経て中心のひまわり型した祈りの地で頭を上げた内陣の十字に差し込む光! 


「上から見た図。左から入って白い部分を歩いて中心へ向かうんですが…
この柄、やばくね?」




 あえて絶対的といいたいホーリーさは、何かと比べ、西洋を色眼鏡で見ている自分への裁きの光にも思えて。


「やはり体感を忘れちゃいかんの」



 モン・サン・ミシェルへ西進する車中、仏教の本を読むせんとくんの右手にその不思議なぐるぐるが描かれたしをり。




「フランスもご年配は元気そのもの」




〜まだまだ続く〜
all text&photo by K.Fujimoto




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