2013年8月18日日曜日

ふじもせんとくんの休暇/第三回 ステンド・アローン。




「基本、セーヌ川とともにありて」




 決まらないネタ、山積するロケハン、薄くなる財布、合わないスタッフの予定、アポ入れの不調、見せ方の懊悩、迫りくる締め切り、繰り返されるデザイン修正、進まない原稿。

 雨の日も風の日も、元旦に盆だって校了は必ずやってくるわけで、空っぽになる一方の引き出しと反比例して大きくなる腹回りにもめげず、“最新”といわれる事象に対応していかねばならないわけです。因果すぎるこの商売に必要なのは、アンテナや情報処理能力なんてものではなく、季節の行事や草花への感覚、自分の遊び働く場所をよく知ることといった、自分の目線を培う変わらないものごとへの絶えざる興味、日々経験して得たものごとをまわりの人にパスしていく力、その2点です。


「この日記だって!僕からのパスだよ」


さ、パリもいよいよ本番。3日目をどうぞ!


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3日目

「ほとんど狂気すら感じるステンドグラス鬼」




 聖堂、霊廟、大聖堂。権藤、権藤、雨、権藤。

 ヨーロッパ旅行の宿痾は、壁画や塑像、あらゆる部分が聖書可視化のキャンバスとなっており、根を詰めた聖堂巡りをしてしまうと、どうにも抹香臭くて、はっきり言いますと“飽き”る点。

 昨年のイタリアがフレスコ画祭りならば、フランスはステンドグラスできました。まずはフランスの中心、ノートルダム大聖堂。

 ホットパンツのパリジェンヌが、聖堂の楼に登るべく列を作る様子は、総本山バチカンを抱くカトリックの本場イタリアと比べればずいぶんカジュアルで、それでも世界に響くカテドラルとなればやはり彼女たちの顔にも緊張が走ります。

「ここはフランスの中心!」

 “シティ”の語源になったシテ島の12世紀ゴシック様式の傑作。なお、シテ島をモチーフに大阪の中之島はグラウンドデザインがなされています。
 十字の建造物その端を埋めるバラ窓が、ひとつずつ色のレシピによってグラデーションと物語を描く様子からは、執着を超えた強烈な念すら感じる。

 「silence……シーッツ」マイクから流れるおだまりサインはその後のベタ観光鬼殺しのスタート合図。


 
「ベタ観光その1」

「ベタ観光その2。カンフー上手そう」




 続いては処刑人ムッシュ・ド・パリが目を光らせたコンシェルジュリ。元王宮をフランス革命時代に牢獄に転用したもので、かのマリー・アントワネットも収監され、ココから従容とコンコルド広場の断頭台へ向かったといいます。
 ロベスピエールが進めた革命も、本人が三角の刃の露と消えて終結を見るのですが、親戚同士のケンカ「百年戦争」は言わずもがな、聖堂や王宮が容赦なく牢獄へと転用され、ホロコースト同然に知識人の血を供物として差し出したフランスが、前後の歴史で徹底的に他国とのケンカに負け続けた理由もなんだか推し量れます。

「ナポレオンとルイ14世だけだね、史上フランスを強くしたのは」

 知ったかせんとくんはサント・シャペルへ。
 十字軍で実績をあげたルイ9世が、購入した聖遺物・茨の冠を顕彰・保管すべく建てたものです。フランス革命時にも被害を免れた目もくらむようなステンドグラスのオンパレード。ハコそのものが宝石箱と呼ばれ、世界一の名に恥じないそれらは…とココまで書いて告白したい。この後にエッフェル塔、凱旋門、ルーブル美術館、コンコルド広場にシャンゼリゼ通り、オルセー美術館まで詰め込んだこの日のせいで旅日記の進行が止まっていることを!


「なぜその眼で見ない。なぜファインダーを通すのだ」



 ルーブルではモナリザ、ミロのヴィーナス、サモトラケの二ケもええ、見ました。オルセー美術館ではマネ・モネ・ルノワールにロートレック、ゴーギャンゴッホ、新古典主義から印象派までええ、見ましたとも! 

 気付けば“見て”るだけ、無感動な自分に気付いたせんとくん。

「絵に申しわけが立たないよ」

 もう途中で帰ろうとすらホンキで思いました。行ったという事実なんてひとつも欲しくないのです。単純に量が多すぎる、ヨーロッパ特有の名画マッシブ・アタックには皆さんご注意を。




「ブルートレインという名のレストランでワイン痛飲。
でもブルートレインさがまるでなくて」


〜まだまだ続く〜
all Text&Photo K.Fujimoto








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