2013年8月16日金曜日

ふじもせんとくんの休暇/第二回 しんねり。



「ギャレって“駅”のことやったんやね」



共通の友人の多い赤の他人。


 フェイスブックのタイムラインに流れてきた、タグ付けされたその彼のページを何気なく開いてみれば、高校・大学時代に3度告白してフラれた女性が、そのままの清らかさで、はかなさで、そして何より母性を湛えた美しさで、横に写る彼そっくりの小さな赤ん坊を抱えて微笑んでいるのでした。
 何を今さら、目を背けることもそっと閉じることもないけれど、祝福の優しい気持ちを追いかけてくる得体の知れない甘酸っぱさ、それを追っ払ううちに突風が吹いて窓が鳴いて。SNSというのは、縮まらないひとの距離をいつでも冷酷に、突然告げてきます。

 皆さんもそんな経験ありやなしや、中一日の約束を早くも破って、どっこいふじもせんとくんは今日も行く。

「ヤケに燃えて硬くなる!!!」

 チューブの曲をなぞって盆真っ盛りの更新、パリに着いて寝るだけだから小品ですけど!



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2日目

 気負い込んでの宿敵本と対峙するは悪手。旅行書やエッセイから始めるが妙手、というのは本因坊せんとくんの飛行棋譜。このところは『思想地図』シリーズを6時間かけて読破するというのが、遠い空を近くしてくれる定石にて。

 手に『チェルノブイリ・ダークツーリズムガイド』、耳にピンクフロイド『ダークサイド・オブ・ザムーン』というどうにも屈折した食い合わせで、このひと月蓄積された疲労もあり、半分溶解しかかった状態でシャルル・ド・ゴール空港の地を踏むことになりました。

 そんな精神状態もあったのでしょうか。荷物コンベア、点呼、バスへの乗り込み、点呼、ああどうも目につく鼻につくご婦人がいらっしゃいます。


 齢は60前後でしょうか、しんねり濡れそぼったソバージュをカチューシャをして前後に分けしめ、なんやら公国の太子ちゃうんやから系丸襟ブラウスの裾その他一切の裾という裾にフリルを装着、友人夫婦に撮影をせがんでは、旦那様の腕を持って、そうです、うふー、などと呻きつつ組み体操の扇の要領でぷらぷらポージングを決める彼女の姿は、まだ見ぬコンコルド広場の断頭台を一瞬で想像させるに難くないものでした。


 グリースでもって横分けしたふじもせんとくんのワイルドワイルドウエストな見てくれもありますが、挨拶をしても反応なく、昼食の席はこれを避けられ、前足でちぎることをせず、与えられたパンを噛みちぎる姿は使い魔バフォメットかベテルギウスか…

「ガブリエル様あたりに捌きの雷でもってただちに両断していただきたいねっ」


 そう悪態をついて、ホテル飛び出し繰り出したスーパーで買ったワインを一本飲み干したふじもせんとくん。ひとまず上陸初日はギャレ・ド・リヨン(パリのリヨン駅)横のホテルの布団をひっかぶったのであります。


「ツアーで行くなら連休がいいよ、でないとハネムーンと老夫婦ばかりだから!」



「本日の空は『ビル間の月、垂直の雲を添えて』」




〜まだまだ続く〜
all text&Photo by K.Fujimoto







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