2012年8月15日水曜日

ふじもせんとくんの休暇/第五回 せんととジュリエット。




 後輪パクられた自転車背たろうて半泣きで帰った夜もあった、同窓会で旧友たちの充実ぶりに目を剥いた。そしてお墓参りまんまんちゃんあーんしてから、ひとつ目をギュッと瞑って終戦の日を想いました。こう打っているヨコに街宣車がサブちゃん「がまん坂」を鳴らして走っていく。なんだかお盆らしいふじもせんとくんの休暇日記つづき、はじまりはじまり。



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(第四回の続き)

「パッラーディオさん。近代的建築家のハシリがこのひと」



「どんな演目でも背景チェンジなしのオリンピコ劇場。
海老蔵もでしゃばったとか」





 パドヴァの街で、宗教美術の歴史を変えたジオットさんが描きつけたラピスラズリの煌めく蒼に見とれたなら、続いてのヴィツェンツァでは、重厚な建築群に出会うことになります。

 アンドレア・パッラーディオさんが、街全体をギリシャ風に整備、最古にして現役の劇場・世界遺産オリンピコ劇場はじめ重厚な建築が織りなす風景は、“風格”という形容では陳腐でしょうか。
 かつて竹中工務店が取り組んだ御堂筋の景観や、橋や学校といったインフラを財閥のお大尽が投資した、大大阪のかつてを連想させます。


「すくらっぷ&びるどばかりの今の大阪に、無念が募るなあ…」





「オシャレピーポーが一番多いのがヴェローナでした」




 朝から精力的に古刹を巡った3日目最終地点では、この旅のメインイベントのひとつが待っていました。

 世界遺産の街・ヴェローナのアレーナでのオペラ生鑑賞。ロミオとジュリエットの逸話でもあまりにも有名なこの街ですが、夏の二ヶ月間、“イタリアの父”作曲家・ヴェルディに敬意を表し、彼の演目を中心を連日開催する音楽祭で賑々しい。
 何しろローマのコロッセオより古い『グラディエーター』なアレーナ! 全世界から集った2万7千人超満員札止め、生オーケストラと当代一流の歌手による『アイーダ』が聞けるのなら、興奮せずにおれましょうか。


「どうだいシニョーラ」


 全身お気に入りのブランド「kolor」に身を包み、ポマードをたっぷり撫で付けたふじもせんとくんと、和服のオカン&祖母。旅行者たちに幾度も写真をせがまれ、イイ調子の藤本家ご一行。でもド派手な花柄ワンピースに巻き髪、まぶたにごってり金色を乗せた鉄面皮Oさんと出くわすや、


「きっきれいですか…いや何の本気ですね」


 と、あまりのインパクトにうっかり口が安尾新之助。その時のOさんの髪の掻きあげ方は、トップロープからミサイルキックをかます寸前の豊田真奈美の殺気そのものなのでした。



「雨降ったら正直終わりッス」




 席はまさかのアレーナのアリーナ席5列目。すなかぶりばちかぶり。
 コネ以外あり得ない最上級の場所で、まわりはカクテルドレスに最高級のクラシコスーツに身を包んだ本意気のセレブばかり。前の席にはとてつもなく縦に長いシャンパングラスを、どこからか手にしたキツネを肩からぶら下げた豊満なマダムもいます。


「もっとキメてもよかったか…」


 ちょっと悔いはあるけれど、これほどの得難い経験はなかなかできないと、真剣に鑑賞するふじもせんとくん。エジプト王女役演者の天童よしみ度に突っ込みつつ、疲労のあまり爆睡するツアー客たち。

 キツネとガンを付け合いながら、反射板のようなOさんの金ムクまぶたに照らされ続けたオペラは、夜9時半からなんと深夜1時まで続いたのです。




「ブラーボ、マエストロ!」



 カーテンコールとともに終了し、ふじもせんとくんの崩れた前髪を見たOさん。「むかしの柴田恭平みたいだネ」そう確かに微笑んだのでした。

(第六回に続く)
all Photo & Text by K.Fujimoto




「ラテン美女、目に焼き付けとこ」






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