2011年5月20日金曜日

恋のUstream 〜再録〜

Photo by Kazutaka Fujimoto(@Bar CABASA)




 「パイセン、今日も顔濃いっす! ちょっといいスカ?」

 「しばくぞ。なんやモノクロの枠が余ったって? ほたら行きつけに関するなんやヨタ話でも書こか。ちょっとレイアウト貸してみい、ぶわぁ文字数結構あるやんけ、もうひとり酒場で飲んでた時の妄想やけどかまへん? あ、なんでもいいの。じゃ…」

こんな感じでいつものように後輩の内股野郎・フクヤマくんを恫喝していたところ、酔っていたとしか思えない、下記のごとき文章を捻り出したのであります。今更ながら、なんでこんな文章載ったんやろ、との念を禁じ得ません…。

2010年の6月13日が最終保存日。梅雨のおしめり時期にふさわしい拙文ですが、今宵花金、酒場のカウンターで、iPhoneたぐってにやりとしてくださいな。ふふ。

☆ちなみに僕が西田辺[Bar CABASA]の常連という以外は、完全フィクションです。

☆2010年8月号『みんなの行きつけ、教えます。』のモノクロページ掲載。



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 角ソ氷なし、あいよ。行きつけの西田辺[Bar CABASA]の波打つカウンターに朽ちたケータイを置いたアナログな僕は、おしぼりを使って1週間の付き合いだったiPhoneの思い出をマスターに愚痴っていた。

 せやねん、でもな、前なくした言うてたipodは見つかってん、なんや最近使てないバギンナウンのリュックの底におったわ、ほんまアップル製品ってひとりの人が持てる数決まってんちゃうか、こんなに椎名林檎は好きやのに。はは。はぁ。

 その刹那、「まいど」マスターが言うなり扉が開いてヒールの女性、端にちょん。机にwescのヘッドホンを置いて、「スーズトニック」と言ったきり、耳のキャラアクセサリーズのものらしいピラミッドイヤリングが光るばかりで左手頬杖で飲み続ける。杯の上げ下げのスピードは、いつも酒場の空気が規定する。おかわり、おかわり。相手の飲むあまりの早さに、酩酊した頭で僕。「ねぇマスター、だいたいiってなんやろね」「わたし、もしくは自分でしょ」突然振り向いた彼女が応じた。イヤリングが光り、頬杖の赤くなった跡に3人で笑った。


 彼女の名前はエミと言った。エミに聞いて始めたツイッターのDMがきっかけで、会うことが増えていった。待ち合わせはいつもアップルストアのipadコーナー。僕のipodを奪い取り、画面に出ていた大西ユカリの『南部の女』になにこれ、マシュー・ハーバートとかないの、えーまだミクシィやってんの、フェイスブックやんなよ、そろそろ帰らなきゃ、ユースト見なきゃなんないし。そんな最新ツールを使いこなす彼女と、じゃりん子の僕とは世界が違ったけど、お洒落な彼女と一緒にいるのは楽しかった。恋こそが一番の好奇心の源、会うのも5回になると、「本ってさ、重いからさ、Kindleは買うよ」などと僕もうそぶけるようになっていた。


 その夜、大好きな岸里[しんみどう]でマッコリをしこたま飲んだ後、[Bar CABASA]へシメに向かう。話題はDOMMUNEの新番組について。すっかりろれつが回らない僕は、受け売りの知識をどや顔で披露するばかり。当然、彼女はtwitterを手繰りながらもう聞いちゃいない。「じゃあこれでDOMMUNEの話題は最後。あれって、COMMUNEの先を行くから、頭文字をDにしてるらしいんだ。でも、僕はさしずめその次…E、エミューンだね」。手を止めてエミは言う。「私の心はこのパネルみたいに、簡単にスライドしないよ。でも…前のシツモンの答えだけど、iって…iって実は漢字なのかもしれない」頬杖してないのに赤らんだエミの顔を見て、僕らはまた笑った。


 1時間後。新番組を見に、ひとつの部屋へ向かうふたつの背中を見送りながら、マスターはiPhoneを取り出しパネルを叩いた。


「恋のUstream,on air


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お粗末様でした。

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